食中毒菌について
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食中毒菌とは
生菌数
生菌数とは、いわゆる雑菌と言われるもので、食品衛生上での微生物汚染の程度を示す最も代表的な指標菌とされています。
食品およびそれらが製造加工された環境全般の細菌汚染状況を反映し、また食品の安全性、保存性、衛生的取扱いの良否などの総合的な評価判断に使うことができます。
一般的に1g当たり1000万個以上(10^7)の菌数になると食中毒を起こす危険があると言われています。
したがって、生菌数をコントロールすることで食中毒の危険性を減らすことが可能となります。
生菌数は、一般生菌数や標準平板菌数(Standard Plate Count:SPC)とも言われています。
食品微生物規格基準の例
分類 | 項目 | 一般生菌数 |
---|---|---|
乳・乳製品 | 牛乳・加工乳 | 5.0×10^4(=50,000) |
乳飲料 | 3.0×10^4(=30,000) | |
クリームパウダー バターミルクパウダー |
5.0×10^4(=50,000) | |
アイスクリーム 乳固形分15%以上 乳脂肪分8%以上 |
1.0×10^5(=100,000) | |
ラクトアイス(乳固形分3%以上) | 5.0×10^4(=50,000) | |
常温保存可能な牛乳 | 0(保存試験後) | |
加工食品 | 未殺菌液卵 | 1.0×10^6(=1,000,000) |
生食用かき | 5.0×10^4(=50,000) | |
生食用冷凍鮮魚介類 | 1.0×10^5(=100,000) | |
冷凍ゆでダコ 冷凍ゆでがに 無加熱摂取冷凍食品 加熱後摂取冷凍食品(加熱済) |
1.0×10^5(=100,000) | |
加熱後摂取冷凍食品(未加熱) | 3.0×10^6(=3,000,000) | |
衛生規範における製品の基準(目標値) | そうざい類:加熱処置製品 (卵焼、フライ、煮物など) |
1.0×10^5(=100,000) |
そうざい類:未加熱処理製品 (サラダ・生野菜など) |
1.0×10^6(=1,000,000) | |
洋生菓子 | 1.0×10^5(=100,000) | |
生めん | 3.0×10^6(=3,000,000) | |
ゆでめん | 1.0×10^5(=100,000) |
大腸菌群
大腸菌群は、グラム陰性無芽胞桿菌で48時間以内に乳糖を分解して酸とガスを産生する好気性または通性嫌気性と定義される一群の細菌とされています。
大腸菌群は、ヒトや動物の糞便だけでなく土壌や空気などの自然界にも広く分布することから、安全性の指標というより環境衛生管理に有用な衛生指標菌と考えられています。
加熱処理された食品で検出された場合は、未加熱製品からの二次汚染や手指などからの環境二次汚染などが考えられます。
未加熱処理の食品から検出された場合は、糞便由来なのか環境由来なのかの判断はできないため注意が必要となります。
糞便系大腸菌群および大腸菌
大腸菌群の中で44.5℃で発育して乳糖を分解しガスを産生する菌群を糞便系大腸菌群と言い、そのうち、インドール産生能(I)、メチルレッド反応(M)、Voges-Proskauer試験(V)、シモンズのクエン酸塩利用能(C)の4つの試験のパターンが「+ + - -」の反応を起こすものが、大腸菌(Escherichia coli)とされています。
4つの性状試験のことをIMViC試験と呼びます。食品衛生法では、乾燥食肉製品、生食用かき、加熱後摂取冷凍食品(凍結直前加熱以外)などにE.coli陰性や最確数法による○○以下と成分規格が定められています。
E.coliは、ヒトおよび動物などの糞便に存在しており自然界で死滅しやすい点から、食品中での存在は比較的新しい汚染を示しています。
サルモネラ
サルモネラは、世界的に重要な細菌性食中毒の1つであり、主要な原因食品は鶏卵をはじめとした畜産物から多く見られています。さらにサルモネラ汚染は、水、土壌などの環境中にも広がるため、畜産物以外にも野菜などあらゆる種類の食品が食中毒の原因となりえます。
サルモネラは鶏や牛、豚などの家畜も保菌してることから、食肉へのサルモネラ汚染の除去は困難とされており、食肉からの二次汚染が起きないように取り扱いには注意しなければいけません。
食品以外では、ペットなどの保菌動物との接触によっても感染することがあります。
潜伏期間の平均は12時間ほどと言われており、一般的には発症には1gあたり10万個以上の菌数が必要となっているのですが、サルモネラ・エンテリティディスについては100個以下での発症が確認されています。
鶏卵由来のサルモネラ食中毒は、サルモネラ・エンテリティディスが原因であることが多く、特に小児のサルモネラ・エンテリティディス感染症では、潜伏期間が3~4日になることもあります。
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、ヒトや動物の皮膚、消化管内の常在菌のひとつとされています。
人の腫瘍などの様々な感染症や食中毒の起因菌であり、高濃度(10%)食塩存在下でも増殖が可能とされています。主な疾患としては感染病原性と、毒素病原性があり、感染症はブドウ球菌が体内で感染・増殖することによる疾患で各種の化膿性疾患や、肺炎、急性心内膜炎、菌血症が含まれています。毒素性は主にブドウ球菌が産生する毒素(エンテロトキシン)による症状で、食中毒などはこれにあたります。毒素エンテロトキシンは、一度産生してしまったら、加熱して菌を死滅させても毒素は消えないため注意が必要です。
食中毒としての主な症状は激しい嘔吐、下痢、腹痛などがあり、原因菌を食べてから2時間ほどで症状が現れ、その後速やかに終息します。
腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは、主に海水中に生息する3%の食塩濃度で最もよく発育する好塩性細菌とされています。
この菌に汚染された魚介類を生食することでヒトに感染し、腸炎ビブリオ食中毒を発症させます。
国内においてはサルモネラと並んで発生件数の多い食中毒のひとつとされています。
腸炎ビブリオ食中毒は、6~12時間の潜伏期の後に激しい腹痛をともなう下痢を主症状とし、嘔吐や発熱をともなうこともあります。2~3日で回復しますが、高齢者や免疫力の低下した患者では毒素による心臓毒性によって死亡する例もあります。
腸炎ビブリオは、増殖力があり増殖の割合も早いのですが、低温、高温、真水、酸による処理に弱いため調理や加工の際には真水で十分洗浄し、温度管理を行うのが重要とされています。
セレウス菌
セレウス菌は、土壌細菌の一種で空気や河川など自然環境に広く分布し、穀類、豆類、香辛料など土壌と関係する食品を汚染する菌とされています。
ヒト・動物の環境に広く分布しており、食品への汚染機会が多く、食品が衛生的な取扱いされなかった時に、腐敗や変敗の原因となる菌とされています。
セレウス菌の中には芽胞を持つものがあり、100℃、30分の加熱にも耐えることができます。
セレウス菌食中毒は、嘔吐毒(食物内毒素)を原因とする嘔吐型食中毒と下痢毒(生体内毒素)を原因とする下痢型食中毒の2種類があります。
嘔吐型食中毒の潜伏期間は、30分~6時間であり、これらの症状はブドウ球菌食中毒と類似しています。
下痢型食中毒の潜伏期間は、6~15時間でありウェルシュ食中毒の症状と類似しています。
国内では、嘔吐型食中毒が大半を占めており、原因食品に炒飯、焼きめし、ピラフ、弁当類などがあります。
リステリア
Listeria属菌は、L,monocytogenes、L,ivanovii、L,innocuaなど17菌種存在し、現在新規に提唱されているものもあります。
それらのうち、通常ヒトに病原性を示すものはL,monocytogenesのみであり、食品検査では本菌が検査対象となっております。
ただし、食品はL,innocuaをはじめとするいくつかのL,monocytogenes以外のListeria属菌で汚染されている場合も多いため、これらの菌との鑑別が重要となっています。
また、L,innocuaなどのListeria属菌をL,monocytogenes汚染の指標菌として環境モニタリングなどの対象となる場合もあります。
欧米ではリステリア症の大部分はL,monocytogenesに汚染された食品に由来することが明らかになっており、乳製品、食肉製品、サラダなど、ready-to-eat食品(加熱しないでそのまま食べる食品や調理済み食品)に由来する事例が多く、わが国においてはリステリア症の集団事例はまれでありますが、散発事例は発生しており、人口10万人当たりの罹患率および食品の汚染率は欧米と
大差はないとされています。
生乳 0~5%、食肉 10~50%、鮮魚介類 数%~40%、野菜 0~5%、チーズ 0~10%、食肉製品 数%~20%、魚介類加工品 数%~30%程度の本菌の汚染があります。食品加工施設では、床、壁、排水溝、加工器具、機械などから分離され、ステンレス、ガラス
ゴムの表面に付着しバイオフィルムを形成する場合もあります。エアロゾル中でも生存可能とされています。
乳酸菌
乳酸菌とは糖類を発酵してエネルギーを獲得して、多量の乳酸を生成する細菌の総称で、形態的に桿菌(Carnobacterium,Lactobacillus,Weissella)と球菌(Enterococcus,Lactococcus Leuconostoc,Streptococcus)に分けられ、グラム染色性は陽性です。いずれも酸素の少ない環境に好んで発育し、さらに酸度(pH3~4程度)に耐性を示すことが多く、栄養要求性はかなり複雑で、糖類のほか、多くの種類のアミノ酸やビタミン類を要求し、菌種・菌株により微量栄養素を加えなければ発育できないことも知られています。乳酸菌による乳酸発酵の形式には、ホモ乳酸発酵とヘテロ乳酸発酵に分けられていて、ホモ乳酸発酵は糖類から乳酸のみを生成する発酵であり、ヘテロ乳酸発酵はヘキソースから乳酸と乳酸以外の物質(アルコール、炭酸ガス、酢酸など)を生成する発酵とされています。
これらの乳酸菌は、農産物や食品からヒトや動物の体まで自然界に広く分布し、各菌種の分布にはかなりはっきりとした「すみわけ」があることも知られています。Lactococcusは、乳製品のスターターとして食品工場で利用されている菌種も多くあります。
Prediococcus,Leuconostocはほとんど発酵に関連した菌で、動物の生体とは関係が少なく、Lactobacillusは乳酸菌の代表的なもので、発酵食品から、口、腸管、膣の常在菌として、ヒトや動物の保健効果との関係で注目されています。